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1986年の4月、まだ発売されて間もなかったミノルタα−7000に24mmと35〜70mmのレンズ2本を持って、旅に出た。7月の終わりまでの4ヶ月近い旅行。なんの予定もなく、ただただ歩いた。

 当時は写真を仕事にしているわけではなく、もちろんそんな技術も知識もなく、気ままにシャッターを押した。

 あれから何十年も経って、今でも好きな写真がいくつもある。

 

 フィルムと印画紙の時代からデジタル全盛の時代になって、このスペインとポルトガルの写真をデジタルでもう一度プリントしてみようと思った。

 ネガをひっぱり出してきてスキャン。ネガに付いたキズやゴミを取るために、パソコンのディスプレイに大きく大きく拡大していく。

 撮影した当時には気付かなかった風景があらわれる。

 被写体の女の子の遥か後ろを歩く人。サグラダ・ファミリアの無数の窓(穴?)の一つから顔を出しているカップル。それらは35mmの小さなフィルムの中ではホコリほどの大きさもない。

 ファインダーを覗いている時には知ることのなかった被写体たち。

 それに気付いて、スキャンしていた一週間ほどはパソコンのディスプレイの中で、もう一度、旅をした。

 

 

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