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 1986年の春。
 初めて一眼レフのカメラを買ってから暫くして、旅に出た。初めての海外旅行であり、初めての長い一人旅だった。
 何冊かのガイドブックとトーマスクックの時刻表をバックに入れて、スペインとポルトガルをまわった。途中、予定になかったジブラルタル海峡を渡ってモロッコにも足を延ばした。
 昼間は町で写真を撮って歩いていれば楽しいが、一人旅の夜はこれといってする事もない。トーマスクックの時刻表は数字と駅名ばかりの本だが、夜、宿のベッドでアレコレ考えながら見るのが楽しかった。夜に時刻表を眺めていて、急に旅先を変更した事もあった。
 今見ると本当に数字ばかりで、よく読んでいたな〜と思うが、有り余る程の時間があったのだろう。ネットが普及した今でも、こんな時刻表を持って旅をするバックパッカーは、まだたくさんいるんだろうか。

 4ヶ月近いイベリア半島(スペイン、ポルトガル)の旅から帰って来て、創刊して間もない学研の女性誌『ネスパ』に、旅のフォトエッセイを書いた。その時の文章と写真も再掲載した。
 

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